COLUMN「メイド・イン・北海道」
産地を特定できる、材料としての「木」。 家具づくりを始めて、もう30年以上が過ぎました。 「北の住まい建築研究社」という長い名前の社名を付けて、家づくりの理想を求めて15年。 私の家づくりの理想は「すべての工程を自分たちで作り出して、家を完成させる」ということです。 北の住まい設計社では、家具を作ってきました。 初めから、無垢材だけで引出の底板に至るまで、 合板は一切使用せずに全ての部分を作ることにチャレンジし、そのことは実現しました。 その工程で出てくる「家具として不向きな木」を、床材として作りました。 建具も自分たちで作ってきました。 キッチンも、外壁材も、木でできている部分は全て自社で作ることにしています。 それは、どうということはない、些細なことのように思いますが、自分たちにとっては重要なことと思っています。 なぜなら、丸太を買い、もしくは製材を買うところから始まる家具づくりでは、木の育ったところから知ることができます。 多くの工業製品といわれる道具の中で唯一木製品だけが原料の産地を特定することができるのではないか、と思うのです。 しかも、無垢材だけで作るのですから、木のすべての部分は出所を特定することができるのです。 このことができると知った時、「やってみよう」と思うのは、モノづくりをする者として当然のことであろうと思うのです。 北海道に根付くモノづくり。 私たちは今「北海道で産出する木でしか家具を作らない」と宣言し、そのことにチャレンジし始めました。 その先には、木がどの山で、谷で、育ったかということも特定することが可能ではないかと思っています。 私たちは、このワクワクするような家具づくりを、お客様に届けたいと思っているのです。 家具の話になってしまいましたが、実は家も構造材は木でできていますので、その部分については産地から特定できるのです。 私たちは大工を自社で育成しています。手加工で、構造材を刻んでいます。 その構造材は、今は「北海道の木」というだけで、産地の特定はできていませんが、新しくスタートした企画では、 北海道の北にある中川町の山で育った松の木を製材し、天然乾燥させる、というところまでたどり着きました。 まだまだ半ばというところですが、「家を全て自分たちで作る」という考えでの道程は、ゆっくりとですが、着実に進んでいます。 おそらくこの文章が表に出てから20年後には、 私の夢である「全ての工程を自社で」という家づくりは、完成を見るであろうと思います。 その20年後は、私がこの地東川の山奥に移り住んで50年を迎える時なのです。 半世紀、手仕事で北海道に育った木で家具を作り、家を建てることが出来る夢にチャレンジして… 私たち北の住まい設計社そのものが「メイド・イン・北海道」なのかもしれません。 代表 渡邊恭延