【Design Stories Vol.4 】デザインのプロセスと考え方② -大切にした想いと細部のデザイン-
自然と調和し、人の生活を豊かにする製品づくりを目指すYAMAtuneと、地球環境に負荷をかけないものづくりを追求する北の住まい設計社/建築研究社が綴る、ショップオープンまでのストーリー。 前回までのDesign Stories 【DESIGN STORIES VOL.1 】工事の概要と完成予想パース 【DESIGN STORIES VOL.2 】YAMAtuneが北の住まいに依頼するに至った理由ときっかけ 【Design Stories Vol.3 】デザインのプロセスと考え方① -プランの変遷とYAMAtuneの英断- 第4話目の今回は、デザインをまとめ上げていく過程で大切にしてきた想いや、 使う素材についての北の住まいの考えをご紹介できればと思います。 「お店の顔」 「最後に立ち寄るレジカウンターで、温かい気持ちになって帰っていただきたい。」 YAMAtuneさんが大切にしている想いの一つです。お店の顔とも言えるレジカウンターは、特に慎重に検討を重ねたところ。想いを形にして表現するために、お客様とスタッフの距離感や使い易さ、素材や色味、納得のいくまで何度も打合せを重ねました。 レジカウンターの完成イメージ。「自然との調和」を信条とするYAMAtuneさんにふさわしい、自然の力強さが表れたカウンター。(画像はイメージパースです。実際の仕上がりとは一部異なる部分もあります。) 天板の納まりを打ち合わせしている様子。意匠的に重要なポイントのため、代表が自ら現場に行き、大工さんと打ち合わせをします。 天板には北海道産ニレの無垢材を採用。倉庫の中で出番を待っていた貴重な大きな板を使い、天板を仕立てました。スタッフ側は商品である衣類を畳む時に傷つかないようまっすぐ仕上げ、お客様側は耳を残して自然の形を生かしています。耳を残す理由は意匠としての意味だけではなく、木を無駄なく使いたいという想いから。 私たちは解体現場から出た古材や、買い手のいない木材など、ゴミになってしまう木材を出来るだけ買い取って、その時が来るまで大切に保管をしています。それは弊社代表・渡邊の、木に対する愛の深さからはじまったこと。そして今回のニレは、お店の顔とも言えるレジカウンターで日の目を見る事ができました。 東川の石 天板の下には「東川の石」を使うことに。石は一つ一つの大きさ・形が異なるため実際に並べてみて天板との関係を見ながら収まりを検討しています。以下は、その石についての代表の想いです。 「東川の石」 東川町に産する天然石を使いたい。この石は東川の開村以後、農地を開拓するため取除く必要から田畑の隅に放置されてきたものでおそらく70年位の時を経過したであろうと推測されますが、非常に硬く重い石です。しかし天然の物質である石を好む私たちにとっては表舞台で堂々と居座ってもらいたいと。石は無言ですからなおのこと。 誰かには要らないものでも、その魅力を生かせる場所はある。「東川の石」は私たちにとって欠かせないものとなりました。 外構工事・庭づくりを主に手掛ける職人が、ひとつひとつバランスを見極めながら。 石材として用意されたものを手に入れることは簡単ですが、近くで採れるものを使うというのが、本来の自然な形ではないでしょうか。そのような想いで、家具作りも北海道産の木だけを使っています。そして「その土地にあるものを使いたい」という想いはYAMAtuneさんも同じでした。レジカウンターは、そこにお客様や商品を大切にする想いが重なり、生まれた形。ご来店される際には、ぜひ注目していただきたいポイントです。 北海道産の広葉樹 ここまでショップ棟のレジカウンターのご紹介をしましたが、他にも北の住まい設計社の工場で製作した造作物が数多くあります。商品を陳列する什器はもちろん、カフェのカウンターテーブルやショーケース、階段板や手すり、ドア、床材、各種棚板類や細かなパーツ…。家具職人の技術を生かし、木で作れるものはほぼ全てと言っていいほど自社で製作しています。建築(店舗)設計・デザインから、造作家具や置き家具、インテリアの設え、庭づくりまでワンストップでご提案できることが、私たちの一番の強みです。 そしてこれらの造作物には、北海道産のさまざまな種類の木が使われています。 そこにも、大切にしたい考え方があります。 ショップ棟の階段板には、比較的幅広の材が手に入りやすいタモを使用。贅沢に一枚板で、しっかりとした厚みもあり、安心感があります。 建具はカバで。散孔材なので木目の主張が穏やかで、悪目立ちしません。 「木材の選定について」 私は木の種類に関しての考えは、2つの分類を大切にしています。1つは針葉樹、1つは広葉樹。今回は広葉樹について。学問としての分析ではありません。目で見て感じる事を述べますと、広葉樹は木理(木目などの模様)が複雑であり、それはおそらく育った環境、土、風、気温、雨といった自然現象に影響を受けて個性が出ているのであろうと思っています。 私は北海道の木で家や家具を作る事に決めたとき幸いにも鈴木木材の鈴木社長の人間的魅力に共感し、この人にお願いしようと決めました。本当に深く木を愛し、森を愛している人です。従って北海道の広葉樹であれば木の種類など小さな問題でありもっと木を好きになるなら、樹種を語るのは小さな事であるという想いになってきたのです。木を知ることになって、人間のエゴとか欲とかすべてを空にしてみたいともっと自然の恵みの良さを愛でる気持ちを大切にしてみて欲しいと思うようになったためです。今はこの考え方を理解していただいている方々が多くなっているように思っていますし、そう願ってもいます。それが次の世代の人に対してのメッセージとして届けられたら嬉しい限りです。次の世代の人達が生き続けてゆける星である事を願って。 例えば、椅子を探していて「今使っているテーブルに樹種を合わせないといけない」と固定観念的に思っている方も時々いらっしゃいます。 もちろんそれも一つの正解ですが、私たちが目指しているのは、画一的な調和ではなく、自然な調和です。空間の仕上げ全てが同じ木ばかりでは、メリハリがなく、単調な空間になることは想像に難くないはずです。(極端ですが)そうではなく、色の濃い木や薄い木、時には着色もうまく使い、異素材も織り混ぜ、メリハリをつけながら、全体としてのバランスを探っていきたい。YAMAtuneさんの店舗では、ミズナラ、イタヤカエデをはじめ、カバ、ニレ、クリ、タモ、オニグルミなど(全て北海道産木材)を使用し、タイルやレンガ、塗りつぶしの塗装も織り混ぜて、全体の調和を図っています。天然林では様々な種類の木が共生しながら一つの情景を作っているように、生き生きとした、自然な調和を目指しています。 レジカウンター天板と壁がぶつかるところの形状を検討中。「神は細部に宿る」という有名な言葉もありますが、こういうところの仕上がりを吟味することが、全体の質の向上につながると考えています。 今後の更新予定 1月27日 (金) 工事の概要と完成予想パース2月17日 (金) YAMAtuneが北の住まいに依頼するに至った理由ときっかけ3月10日 (金) デザインのプロセスと考え方① ープランの変遷とYAMAtuneの英断ー3月31日 (金) デザインのプロセスと考え方② ー大切にした想いと細部のデザインー(この記事)4月21日 (金) 施工のプロセスと職人の手仕事 5月12日 (金) 店舗紹介と店内完成イメージ6月2日 (金) 竣工写真と庭を含めた完成イメージ6月9日 (金) いよいよ明日オープン!店内の様子と営業案内 次回の更新は4月21日(金)。これまで撮りためてきた、大工さんや家具職人の仕事ぶりをご紹介する予定です。 次回の投稿もお楽しみに。 *更新したら北の住まい設計社の公式Instagramでお知らせします。見逃さないよう、フォローもお願いします! @kitanosumaisekkeisha_factory
【Design Stories Vol.3 】デザインのプロセスと考え方① -プランの変遷とYAMAtuneの英断-
自然と調和し、人の生活を豊かにする製品づくりを目指すYAMAtuneと、地球環境に負荷をかけないものづくりを追求する北の住まい設計社/建築研究社が綴る、ショップオープンまでのストーリー。 前回までのDesign Stories 【Design stories vol.1 】工事の概要と完成予想パース 【Design Stories Vol.2 】YAMAtuneが北の住まいに依頼するに至った理由ときっかけ 第3話目の今回は、店舗をデザインするにあたり私たちが考えてきたこと、 そして打合せの中で起こったある出来事についてご紹介したいと思います。 デザインのはじまり 2021年6月、YAMAtuneさんから店舗兼社屋の相談を受けた私たちはまず、この東川町の土地に建物をどう調和させていくかということを考えました。 いくつものプランをスケッチし比較検討しながら、向かうべき方向を少しずつ探っていく。建物の配置や形だけでなく、木の配置やその成長まで見越して検討を進める。 代表の渡邊は、以下のようなことを大切に考えながら、プランを練っていきました。 都会の狭い敷地に建てるお店と違い、広めの敷地に建てる以上、 まず庭があって、木があってという、外部のゆとりをつくること。 建物については、2棟共に2階建てになるため、高低の変化は期待できないが、 大小の比較、それを交差させて庭の中にある様にと考えてみました。 必要な床面積を得る為に、森の中とはなりませんでしたが、 木の成長を待てば、商店に並ぶところと比較して、少し庭が生きてくると、 時間をかけて成長して欲しいと願いながら計画をしていきました。 もともと敷地の中にあった木々を残して、植え替える事にしました。 私達はやはり森と木に関わって、これからも自然との関わりの中で 人にとって必要な営みの場をつくることを考えていきたいと思います。 ― 北の住まい設計社/建築研究社 代表・渡邊恭延 ― 私たちはクライアントの意図する事をくみ取り、形として表現するだけではなく、 その環境にどう組み込むか、そこに生えている木々や草花、動物と、 建物、そこを訪れる人を、いかにして共存させるか、ということを大切に考えています。 渡邊の言葉にある「自然との関わりの中で人にとって必要な営みの場」を体現するものとして、北の住まい設計社東川ショールームとカフェをつなぐ小道にある小さな橋を例に挙げたい。長い年月をかけて森に馴染みながら、人々の往来を支えている。機能だけを追求するなら小道全てに屋根をかけた方が往来には便利だが、それではこの情景は生まれないだろう。森との調和を重んじながら、必要最低限の設備を整えたからこそ生まれた情景。ここで記念撮影をするお客様も多い。 YAMAtuneの英断 私たちとYAMAtuneさんは「自然との調和」を大切に幾度も打合せを重ね、図面やパースを見ながら互いの想いをすり合わせ、やりとりを重ねるうちに、その形は鮮明になっていきました。 そして昨年5月、ある出来事が起きました。新型コロナウイルスを起因とするウッドショックの影響で、無垢の構造材が入手困難となってしまったのです。これによって、工期が予定より3か月以上も遅れてしまうことが判明しました。 代替案として、比較的手に入りやすい集成材を使う方法もありました。しかし集成材には多量の接着剤が使われており、私たちが目指すものづくりにはそぐわない面があります。 ◀︎ 集成材は、小さな木材を縦横に接着して繋ぎ合わせた材料。安定した品質や反りの少なさなどのメリットもあるが、北の住まい建築研究社では多量の接着剤による環境や人体への影響を考え、極力使用しないようにしている。 私たちはまずYAMAtuneさんに事実を報告。 仮店舗の契約期間が決まっていたため、集成材を使った代替案も提案しました。会社経営に関わる重要な事なので、一度持ち帰って考えていただく事に。 そして次の日、YAMAtuneの横山さんから連絡がありました。 「大切な事だから直接伝えたい」 この日打ち合わせの予定はありませんでしたが、急遽こちらの事務所に来ていただき、返答を伺うことに。 そして横山さんは、 「北の住まいに依頼した理由を大切にするため、無垢材で建てる事を選択したい。」 「OPENが伸びてしまう事も了承し、仮店舗の契約期間も延長しました。」 とおっしゃってくださったのです。 工期よりも無垢材を優先する決断と、気がかりだった仮店舗の契約期間まで、たった1日で解決してくださいました。 「英断」と呼ぶにふさわしい迅速な行動と決断に、渡邊は「YAMAtuneさんは芯のある会社であり、この決意に応えなければと強く感じた。」といいます。 「自然との調和」 建築は貴重な資源をたくさん使い、時間をかけて完成するものです。 資源の不足による価格の高騰や納期の遅延など、世界情勢にも大きく影響されます。 そこには目を背けてはならない自然環境との問題があります。 YAMAtuneさんは、このような突然何かを犠牲にしなくてはならない状況においても、これまで大切にしてきた「自然との調和」を貫き通しました。 私たちの建築は100年その場所に存在することを目指しています。 かけがえのない地球の資源を生かすこと。 優先すべき事項は何なのか、クライアントと共に最適な判断をすること。 その場凌ぎではなく、時代を超えて誇れる仕事をしていきたいと強く願います。 今後の更新予定 1月27日 (金) 工事の概要と完成予想パース2月17日 (金) YAMAtuneが北の住まいに依頼するに至った理由ときっかけ3月10日 (金) デザインのプロセスと考え方① ープランの変遷とYAMAtuneの英断ー(この記事)3月31日 (金) デザインのプロセスと考え方② ー大切にした想いと細部のデザインー4月21日 (金) 施工のプロセスと職人の手仕事 5月12日 (金) 店舗紹介と店内完成イメージ6月2日 (金) 竣工写真と庭を含めた完成イメージ6月9日 (金) いよいよ明日オープン!店内の様子と営業案内 次回の更新は3月31日(金)。デザインをまとめあげていく過程で大切にしてきた想いや、細部にわたる検討のことなどをご紹介できればと思います。 詳しくは次回の投稿で。 *更新したら北の住まい設計社の公式Instagramでお知らせします。見逃さないよう、フォローもお願いします! @kitanosumaisekkeisha_factory